COUNTER 7842

吃音のある子どもの理解と支援コーナー
(2019年4月更新)


本ページは関西外国語大学 准教授 堅田利明先生(言語聴覚士)
   の御協力を得て作成しました。



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ことばがつっかえたり、ことばがすぐに出てこなかったりすることを吃音(きつおん)といいます。吃音とはどういったものかをまず理解し、吃音のあるお子さんの支援を考えるためのページです。

 

ことばがつっかえたり、ことばがすぐに出てこなかったりする人に出会ったことはありますか。その人たちのことをこんなふうに思ったことはありませんか。

 

「あわてて話そうとするから」

「緊張しているのだろう」

「気が小さいから」

「自信がないから」

「悩みやストレスがあるのだろう」

「親のしつけや育児に問題があるのだろう」

 

そして、どのようにかかわっていけばよいかについては、

「話し方にいっさい触れないようにすれば、やがてはおさまる」

「小さいころにどもっても、大人になればなおる」

「ゆっくりと話しかける」

「しつけをきびしくしない」

「ストレスをへらす」

「ゆっくり話すようにうながす」

「気づかないふりをする」

 

などなど…、まわりから言われたことはありませんか?

 

ここにあげましたことは、吃音の原因でも、正しいかかわり方でもありません。ですが世間では、このように考えられていたり、アドバイスされたりしがちです。つまり、吃音は、誤解されたり、誤ったかかわり方をされやすいのです。そして、その誤解や誤ったかかわり方によって、吃音の症状を悪化させてしまうことが多いのです

まずは吃音の正しい理解と、必要に応じた支援をできるだけ早くから行っていくことが重要です。何もしないまま、「しばらく様子を見ましょう」や、「一切、触れないようにしましょう」は、単なる放置にすぎません。知らず知らずのうちに症状を悪化させてしまうことにもなりかねません。正しい吃音の知識と、かかわり方を知った上で「様子を見ましょう」とすることとは雲泥の差です。

 

 吃音というもの、そして吃音のある子どもさんにどうかかわっていけばよいのかをご一緒に考えていきましょう。

 

 

1.吃音とは

 

吃音とは、なめらかに話すことができない状態を指します。流暢性の障がいと表現されることもあります。吃音はかつて、「どもり」と言われてきましたが、過去にこのことばを用いた「からかい」が多発したことから、いまは公には使われなくなりました。しかし、「どもる」という言い方は使ってもかまわないことになっています。「どもる」とは、話し方の現象を表すことばであるためです。

吃音のある人たちが集い、活動する自助グループ(セルフヘルプ グループ)のなかには「どもり」という言い方を積極的に使っていきたいと考える人たちもいます。

 

 

2.発症率、有症率

 

吃音の発症率の調査では、5%前後という結果が報告されています。つまり、100人のうちで5人は生涯のどこかでどもった経験があるという意味です。有症率の調査では、1%前後という数値です。つまり、人口100人のうち現在どもっている人は1人くらいいるということです。こうしてみると、有症率は発症率の約5分の1になり、生涯のある時点において吃音を経験した人たちのうち、約8割の人の吃音症状は消失したと考えられます。しかし、約2割の人は、吃音とともに生活をしています。また、吃音は人種・言語・文化を問わず、共通して生じることばの症状なのです。

 

 

3.男女比

 

吃音のある成人の男女比を調べた研究では、約4対1で男性に多い傾向があると報告されています。どもりはじめて間もない幼児期の男女比を調べた研究では、約1~2対1の割合であると言われており、成人のように大きな差がないことが知られています。つまり、女子は男子に比べ、吃音の症状が消失しやすい、つまり自然に治りやすいことを表しています。

 

 

4.吃音の原因

 

吃音の原因は、まだ特定されていません。最近の脳機能研究などの成果で、吃音になりやすい神経学的な基盤があると考えられるようになってきており、何らかの「素因」をもつ人に、発達的・環境的なさまざまな要因が影響し、吃音を発症するのではないかと言われています。しかし、吃音といえどもさまざまなタイプがあり、一様に共通する原因と言えるものはいまだに明らかにはなっていません。したがって、こうすれば必ず治せるという確かな治療方法がないというのが現状なのです。

しかし、吃音をよく知らない専門職の人から安易な考えや意見を言われてしまい、そのことで吃音のある人や保護者・家族が困惑し苦しめられることになります。

吃音の発症原因として誤解されているものがあります。

その1つが「ストレス説」です。下にきょうだいが生まれた、引っ越しをした、共働きで子どもと十分にかかわる時間がなかった、入園や行事、習い事などの精神的負担が原因だと考えられがちです。また、「早口で話しかける」「叱りすぎ」といった親の養育態度やしつけと結びつけてしまわれがちです。保護者、特に母親に対して子どもへのかかわり方を変えるように求められ、その結果、吃音発症の原因は養育態度によるものだと誤解し罪悪感をいだかせてしまいます。その他にも「神経質で気が弱い性格ではありませんか?」と問われることで本人の性格に問題があるのではないかと思ってしまうのです。吃音のあるお子さんのなかには、おしゃべりが大好きなことも珍しくありません。ここで誤解されていることをいくつかあげておきます。

 

誤解されている「吃音」

・口や舌がうまく動いていないから

・言いたいことがたくさんあって,あわてるから

・親の子育てや愛情不足

・習い事や何かのストレス

・神経質で気が弱い性格

・緊張して話すから

・早口で話すから

・大人になれば自然に治る

・訓練すれば治る

・治らないし,何もできない

・気にしないこと

・周りが知らないふりをすること

・ゆっくり話しかけるとよい

・他に何か自信をもたせるのがよい

 

歴史的な経過のなかで吃音に対する誤解がいまもなお世間に浸透しています。多くの人が吃音について学習する機会がなかったためです。理解を遅らせてしまっている現状がここにあります。

5.吃音の言語症状

 

「どもる」というと、「ぼ・ぼ・ぼ・ぼくは」のように、ことばの最初をくり返して言う「連発のイメージがあります。ドラマ『裸の大将』として知られる山下清さんにふんする芦屋雁之助さんのしゃべり方だと思っているご年配の方は少なくないでしょう。吃音にはその他に、ことばを伸ばして言う「伸発」声が詰まってなかなか出せない「難発」の症状があります。そして、これらは連発から吃音症状が進行していった結果であることはあまり知られていません。

さらに、吃音症状は、それが目立つ時期と目立たない、または現れない時期があります。1日の中で変わってしまう人もいますし、数ヶ月から数年をかけて変化する場合もあります。これを、吃音症状の「波」といいます。

吃音症状は、話し方にだけ現れるものではありません。特に「難発」の状態では、喉の辺りがしめつけられるかのような、息が詰まる苦しさを伴うことがあります。そして言いたくてもことばを出せないために、この状態からなんとか抜け出そうと試みます。タイミングを見計らいながら「エイ!」と足を踏み込んで言おうとしたり、身体を大きく動かしたり、手を振り下ろしたり、口の周辺に力を入れたりします。お子さんのなかには飛び上がりながら言おうとする姿がみられることもあります。こうした一連の行動を随伴症状と言います。これは「どもらないで話そう」とするあまり、その努力の結果生じるものなのです。本人のこうした努力によって「連発」や「伸発」がみられなくなったことで、「どもらなくなった」「治った」とまわりの人は考えてしまいがちです。本人の努力はますます苦しい状態へと変わっていきます。放置したままにしておくと吃音症状はさらに進行(悪化)していきます。また、話しづらさが強まり、どもりそうなことばを別のことばに置き換えたり言うことそのものをやめてしまったり、話す場を避けようとしたりする行動が増えてきます。これを「回避行動」と言います。上手く回避することで吃音症状は目立たなくなります。そのため、まわりからはいっそう目立たなくなります。目の前の人がまさか吃音で苦しんでいるということに気づく余地すらありません。まわりのそうした反応とはうらはらに、本人のくやしさ・つらさ・苦しみは強まっていくのです。思春期あたりで、どもる自分を恥ずかしく思い、「ダメな人間だ」と自己評価を低くし、誰にも相談できないまま孤立してしまうこともあります。人格形成の重要な時期に大きな影響を受けることになります。

こうした一連の流れとは違い、難発からいきなり始まったという人がいます。この場合の多くは、しばらくすると落ち着いてきます。連発が現れ、通常の進展の道をたどる場合や自然に消失することもあります。

また、「あぁ、次のことば、どもりそうだ」「あぁ、言いにくいことばではじまっている…」というように、どもりそうなことばや場面を先に予測し、ドキドキします。そして、「やっぱり思った通りどもってしまった」という経験から、さらに不安が高まっていきます。これを「予期不安」と言います。年齢があがるにつれて、本人が吃音をかくそうとしたり、まわりに気づかれないようにと考えたりしているために、授業を落ちついて聞けなくなってしまう人もいます。こうした様子は、まわりから「緊張していそう」「自信なさそう」「不安そう」と、とらえられてしまいやすいのです。

このように、吃音とは単に「どもる」ということだけではなく、「感情」「態度」「暮らし」をあわせて考えていかなければならないのです。

 

 

6.吃音のある人の相談

 

 どもり始めることを「発吃」と言います。何歳ごろからどもり始めるのかを調べた研究では、発吃するもっとも多い時期は2歳から4歳、次に6歳から7歳という報告があります。つまり、小学校の入学前からどもり始めているのです。お子さんがどもりはじめたことに気づいた保護者の反応はさまざまです。「まだ小さいからうまく話せないだけ」「そのうち治る」と、心配することもなく、そのまま過ごそうという保護者もいれば、比較的早い段階で専門機関を探し、相談に訪れる保護者もいます。

こうした時期、すなわち2、3、4歳ごろに、吃音の相談に出向かれた場合、「成長とともに治っていく様子をみましょう」と言われてしまうことが圧倒的に多いのです。これは、約5%にみられる吃音症状は、人口全体みると1%となり、約8割が自然治るという現象があるためです。つまり、実際はかなりの人が大人になるまでの間に吃音が消失してしまう可能性があるということです。ですが、目の前にいる人の吃音症状がその後どうなっていくかは、たとえ吃音の専門家といえども、予測することは難しいのです。自然に治ってしまう8割の群に属するのか、残りの約2割に属し、吃音を持ったまま大人になっていくのかは分からないのです。これまでの時間の経過のなかで、吃音症状を伴いながら他の子どもたちと過ごす間、まわりの子どもたちは話し方の特徴に注目します。そしてストレートに指摘してきます。悪気はありません。「どうしてそんな話し方をするの」「どうして何回も言うの」「へんな言い方」「ちゃんとしゃべってよ」と。言われた本人はもともと話し方を気にしているわけではありません。まわりからの指摘されるたびに次第に気になっていくのです。3歳の子どもさんが、自分の話し方に意識を向けていることは、決して珍しいことではありません。しかし、保護者や先生方はそのことに気づきにくいのです。「友達からことばのことで言われていない?」と本人に問うたところで、「言われてない」と返されてしまうのが常です。もし「言われている」と答えたなら、それはまわりからの指摘をかなり受けており、相当困っている状態であるかもしれません。「言われてない」と返答した場合は問題が小さいという訳ではありません。正面から「言われたりしていない?」と問われると、たとえそうであったとしても「はい」とは肯定しづらいものです。本当のところを聞き出すためのテクニックが必要です。

吃音が出始めたころから、本人にもまわりも、特に保護者やご家族が正しい知識と情報を持つことで、どうかかわっていけば良かを知っていることがどれだけ重要なことでしょう。それは、安心した暮らしをつむいでいくことにもつながります。そうして生活のなかで困っていることがらを話題にしていくことができるようになり、子どもも一緒になって解決の糸口をみつけることができます。やがては、本人自らが将来それを実践していくための練習の場にもなります。一人で抱え込まずに、一緒に考え方法を探っていくために、ことばの専門家に相談してみませんか。

 

 

7.吃音のあるお子さんへの支援

 

吃音のあるお子さんは、入園をはじめ、集団の場やきょうだい間、家族の間において、話し方の特徴を多少なりとも指摘されており、そのうちに、どもって話してしまうことに不安をかかえるようになっていきます。話し方を工夫し努力しようとする一方で、できるだけ話さないようにしようと考えたり、話すことが苦手だと決めつけてしまったりすることにもなりかねません。日頃の友達関係はもちろん、授業の音読や発表、号令、あいさつ等が要求される学校生活では、不安は高まっていきます。独りで悩み、なんとか対処しようとするそのやり方や考え方が結果的に症状を重くしてしまうのです。

 

<自然に出てくる「連発」をできるだけ早くそのまま認められる環境づくりを>

 

 吃音が生じる年齢(発吃時期)はおおよそ2歳からです。本人は何も意識していないようにふるまっていますが、意外と本人は分かっているという場合が多いのです。3歳になればまわりの子どもたちが話し方の特徴を指摘され、気づきはじめます。「気にしないでいいよ」「だいじょうぶだからね」は、一時しのぎの気休めにしかなりません。「○○ちゃんはね、いまみたいに、『あ・あ・あ・ありがとう』ってなるよね。それって、たくさんそうなってしまう子と、あんまりならない子がいるんだよ。でもね、そのままでいいからお話いっぱいしてね。だんだん少なくなってくるんだって」といったように、話し方そのものを話題にし、「そのまま話していてもだいじょうぶだから」と大人が宣言してあげることです。

吃音のある人にとっては、「あ・あ・あ・ありがとう」のような「連発」は自然に生じてくるものなのです。そして、この時期は、「連発」を出さないように話そうとすればそのようにできます。そうした修正の方法として力みや息吸いといった誤った発声方法を身につけていくと、それが強化され、やがては「難発」が生じてきます。その中間にあるのが「伸発」であり、連発を出さないように修正した結果のものです。「連発」は、いざとなれば修正することは難しくはありませんが、「難発」は困難です。同時に不安な気持ちが高まっていきます。まずは、吃音症状の代表である「連発」を自然に生じてくるものとして、「そのまま言ってもだいじょうぶ」という宣言と、そうした環境をご家族や親類のあいだで確認しておくことが必要です。

 

 <先生と協力して、まわりにいる子どもたちに吃音を知ってもらうこと>

 

「連発」は自然に生じてくるものとして、「そのまま言ってもだいじょうぶ」という環境を周りにいる友だちやきょうだいに知っておいてもらう必要があります。吃音症状の指摘は家の中と外だからです。お子さんが、力みのない「連発」を伴っておしゃべりしているのであれば、まわりからの指摘がほぼ無いか、本人が平気でいられる環境が整っている可能性があります。「伸発」や、特に「難発」が増加してきている場合は、まわりからの指摘はない、と考えるには無理があります。例外的に、最初から「難発」の症状を示す子どもさんはいますが、多くは「連発」から始まる標準的な症状の進み方です。その理由は、本人の努力による話し方の修正(対処)なのです。

まわりの子どもたちに伝えていく際の注意や配慮は、掲載してあります参考図書をご活用ください。要点は2つあります。

1つ目は、

①口や舌など、話すのに使う器官はみんなと同じで何ら違いはないということ。

②緊張やあわてて話すことが理由ではないということ。

③世界で研究が進んでいるにもかかわらず、まだ吃音の原因は分かっていないと

 いうこと。

2つ目は、

①自然に生じる「連発」は、そのまま言っていても増加していくことはなく、む

 しろ次第に減少していくことが多いということ。

②連発を出さないように気をつけて話そうとすると、力んでしまいがちになり、やがて、すんなり言えなくなってしまう恐れがあること。

「連発」をそのまま出して話してだいじょうぶということをまわりに知ってもらうことが重要です。世間には100人に1人ぐらいのが吃音とともに暮らしていて、人前で話す仕事をしている人もたくさんいるという事実を大人(先生方)が伝えていきます。そうして、園や学校で気兼ねなく話せる環境をできるだけ早くつくっておくことが重要です。

 

<言語聴覚士などのことばの専門家と連携する>

 

 不安なことがあったり、力んだ言い方が増加してきたりしているようでしたら、ことばの専門家(吃音を専門にしている言語聴覚士であること)に早急に相談しましょう。ことばの教室があるようでしたら担当の先生に相談してみましょう。ただし、言語聴覚士やことばの教室の先生だからといっても必ずしも吃音を専門としているかどうかは分かりません。尋ねるようにしましょう。場合によっては吃音を専門にしている人を紹介してもらいましょう。

 

<吃音のあるお子さんの家庭でのかかわり方>

 

○お子さんの話し方が最初は気にはなります。話の中身を聞き取ろうとしてあげて

ください。

○お子さんのお話を途中でさえぎらないように最後まで聞いてあげましょう。次の

ことばがなかなか出てこないときは、少し待ってから「~がどうしたってこと?」のように、次につながりやすいことばをそえてみるのも良いです。「先にいわない

で」「言いたかったのに」と言われたときには「ごめんね」とあやまれば良いことです。ただただ待つことばかりが良いというわけではありません。いずれにしても話の中身にしっかり耳を傾けてあげてください。

○「連発」の言い方に対して、「ゆっくり」「落ち着いて」「もう1回言ってみて」の声かけは要りません。ですが、とてもあわてて言おうとしていたり、力んでいるときは、「もうちょっと落ち着いて」「力をぬいて」と伝えてあげても良いです。

○自然にでてくる「連発」はそのまま出しておいても大丈夫だということをお子さんに伝えておくことも安心につながります。

○学校の音読や発表で困っていないか、いやがっていないかを保護者が感じ取るよ

うにしながら、学校で配慮してほしいことはないかを話し合ってみましょう。「教室で指名されないようにして欲しい」という時期が出てくるかもしれません。それを尊重します。「いまは良くても将来のためにならないのでは」と決めつけた見方をしないことです。

○劇のセリフを言いやすいことばにかえたり、音読は友だちと一緒に読んだりすることで楽になることがあります。さまざまな工夫を考えていきます。

○お子さんが困っていそうなことや不安に感じていることを、保護者に話してもらえるように、吃音の話題をタブーにせず、日頃から吃音の話をお子さんとできている環境をつくっておきます。

 

 

8.園や学校の先生方に

 

 まずは、先生方が吃音に対する正しい知識をもってくださることです。そして、吃音のあるお子さんと吃音のことや吃音に関する困りごとを楽に話せるような関係をつくっていきます。どうすれば話しやすくなるのかを一緒に考えていきます。そして、吃音のまねやからかいが生じてしまう前に、まわりにいる子どもたちに正しい吃音の知識を学習をする機会を設けます。つまり、子どもたちの疑問にきちんと答えるための授業を組んでいきます。そのことが吃音症状の悪化を防ぎ、安心した学校生活(暮らし)に直結します。吃音のあるお子さんにも、吃音のことを知ってもらい、まわりの人に伝える意味や方法を一緒に深めています。

 

 

9.ことばの専門家(吃音を専門にしている言語聴覚士など)

 

どんな吃音も治せるものであるなら、それを目標にしても良いでしょう。ですが、個々のお子さんの吃音が治ってしまうものかどうかは専門家であってもかならずしも分からないのです。

ことばを専門にしている専門職である言語聴覚士は、吃音のお子さんに言語指導をおこないます。その1つが吃音症状への介入です。しかし、吃音の問題は、「ことばがなめらかに話せない」ことと「そのことで周囲からのどのように思われるか」、そして「本人がそのことをどのように受け止めているか」という3つが関係しています。つまり、お子さんが、かなりどもりながら話されていたとしても、周囲がそのことを寛容に受け入れていて、本人もどもりながらものびのびと話していれば、問題は小さいといえます。逆に、それほどひどくはどもっていなくても、保護者が「この子はどもっているから恥ずかしい」と考えていたり、お子さん自身がそ保護者の方の気持ちを察して「自分の話し方はダメだ」と思っていたりすると、次第に話すことが嫌いになっていくでしょう。これは深刻な問題です。
 このように、吃音の問題は、単にことばの流暢性(なめらかさ)や効率性(スムーズさ)の問題だけではないことを踏まえ、幼児期から学齢期の子どもさんの言語指導では、

① 保護者や保育園・幼稚園・学校の先生に、また本人にも吃音のガイダンス(正しい知識とかかわり方を伝えること)や生活の困りごとの対処を一緒に考えていきながら、同時に吃音に対して寛容な態度と、吃音のあるお子さんとご家族が暮らしやすい環境づくりを支援していきます。そのための要になるのが、園や学校のクラス、学年、習い事の場で一緒になる友達に、吃音について知ってもらい、かかわり方を学べるミニ学習会を設けてもらいます。

② お子さんの不安を軽減し、ご自身が肯定的な認識を持てるように、本人の吃音の受け止め方を支援していきます。

 難発のために言葉が出ない状況が続く場合には、楽な話し方の練習をしていきます。
④ 吃音のある人と出会い、話せる機会を設けたり、保護者同士が子育ての悩みを話せたりできる場を提供していきます。

これらを状況に合わせて回数や期間を設定していきます。

 

10.参考図書と関連ホームページ

 

 吃音のお子さんの指導・支援について、よりくわしく知りたい方や学びたい方は以下の参考図書やホームページをご参照ください。

 

<参考図書>

「キラキラ どもる子どものものがたり」 堅田利明 海風社 2007

「吃音のある子どもたちへの指導 子どもに届けるメッセージ」 青山新吾著 明治書店 2009

学齢期 吃音の指導・支援 ICFに基づいた評価プログラム」小林宏明著学苑社 2013

「特別支援を難しく考えないために」 堅田利明 海風社 2011

「エビデンスに基づいた吃音支援入門」 菊池良和著 学苑社 2012

「吃音のこと、わかってくださいクラスがえ、進学、就職、どもるとき、どうしてきたか」

北川敬一著 岩崎書店  2013

「特別支援教育における吃音・流暢性障害のある子どもの理解と支援」

小林宏明・川合紀宗編著学苑社 2013

「続編キラキラ どもる子どものものがたり少年新一の成長記」 堅田利明 海風社 2013

「吃音のリスクマネジメント」 菊池良和著 学苑社 2014

「小児吃音臨床のエッセンス」 菊池良和編 学苑社 2015

「『吃音』の正しい理解と啓発のために-キラキラを胸に」 堅田利明 海風社 2018

 

福井県特別支援教育センターにも参考図書を置いてあります。

 

<関連ホームページ>

吃音ポータルサイト 小林宏明のホームページ: http://www.kitsuon-portal.jp

NPO法人全国言友会連絡協議会ホームページ  http://www2m.biglobe.ne.jp/~genyukai/

日本吃音・流暢性障害学会           http://www.jssfd.org/

Stuttering Foundation HomePage              http://www.stutteringhelp.org/

ISA                                          http://www.isastutter.org/

IFA                                          http://www.theifa.org/

 

 

 

本ホームページは、関西外国語大学 准教授 堅田利明先生(言語聴覚士)の御協力を得て作成しました。

また、本文は「言葉と自己実現―吃音の社会啓発に向けてー」人権を考える第19号,20163月,関西外国語大学,堅田利明 から引用しています。

 

吃音のある方やご家族が安心して

暮らせる地域社会に