平成28年度 福井県特別支援教育センター 研修講座一覧

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H28度 研修講座報告

研修講座
No11 自閉スペクトラム症の子どもの理解と支援
      -脳機能の問題から子どもの育ちと支援を考える-
終了
実施日
平成28年8月19日(金)10:00~16:00
会場
ふくい健康の森 生きがい交流センター
講 師
神戸大学大学院
教授  鳥居 深雪
講師紹介
日本LD学会理事。医学博士。平成23年7月より現職。発達障害の子どもの臨床発達支援を中心に、子どもの育ちを支えるための早期支援、学校教育から社会に出ていく際のトランジッションなど、研究テーマは多岐にわたっています。対象となる年齢層は、幼児期から成人期まで幅広く、アプローチの方法も、心理、教育、医学、福祉と学際的なものになっています。主な著書:「脳からわかる発達障害」(中央法規出版)、「自閉症スペクトラム入門」(中央法規出版)、「思春期から自立期の特別支援教育「人間理解」のためのヒント集」(明治図書)
受講のポイント
近年の自閉スペクトラム症の研究から、「社会脳」といわれる複雑で高度な脳の働きが解明されてきました。そのような科学的根拠に基づいて、子どもの育ちを支えるためのポイントについて学びます。
参加者
参加者合計 245名
講座概要

神戸大学の鳥居深雪先生から、自閉スペクトラム症の子どもの理解と支援について御講義をいただきました。

午前中は発達障害の概論について話がありました。発達障害とは発達期に生じる障害と捉え、基本的には知的障害を含むこと、LD(学習障害)ADHD(注意欠如多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもが対象となることが説明されました。

午後からは自閉スペクトラム症(ASD)の心理・生理・病理について話がありました。

ASDの主要な心理学的仮説として①「心の理論」障害仮説②実行機能障害仮説③弱い中枢性統合仮説の3つを挙げ、①は他者の心の状態を思い描くことが困難であること、②はプランニングする力が障害されていること、③は文脈や全体を統合してとらえる力が弱いところに特性があることを説明されました。支援方法としては、次の行動への切り替えが難しいため、スケジュールを提示したり活動を予告したりすること、全体像をとらえることが困難なため、アウトラインを提示すること、比喩や皮肉、嫌味、冗談は通じないため、曖昧な表現は避けることが示されました。

いずれも先生の教員としてのこれまでの実践や、現在の相談事例を多数挙げながら、分かりやすく説明してくださいました。

最後に、すべての子どもに、愛着や基本的信頼感を育てること、発達障害は子どもの一側面であり、診断による理解にとどまらず、一人ひとりの生活の状態に合わせた支援を工夫すること、できないことがあっても、良い人柄に育てることが大切であるとまとめてくださいました。
参加者の声

・自閉スペクトラム症の脳機能について論理的に説明していただき、対人面でのつまずきやパターン的な行動の要因を知ることができました。

・自閉スペクトラム症の子どもに対する具体的な支援方法を知り、実践に活用していきたいと思います。

・多くの事例を通して、ASDの特性がある子どものイメージをもつことができました。また日頃かかわっている子どもの普段の行動と重ねながら聴くことができました。